現在劇場公開中の『アップルシード』を観に行った。実は5月1日が映画の日で、1,000円で観られるというのが最大の理由だ。そして、1,000円なら観るよというのは、僕的には、アップルシードにあまり期待していなかったことの現われでもある。ところが、この作品かなり面白かった。 具体的なストーリーについては、観れば判る話なので語らない。アップルシードについて語らなければいけないのは、エンターテイメントとしてのアニメは何かということだ。アップルシードの面白さは、ごく当たり前のストーリーを一生懸命作る、観客をいかに楽しませるかについて周到であるといったエンターテイメントの基本の部分で極めて真っ当な作品だということだ。それは、近年の子供向けでないアニメがしばしば無視しがちだったことでもある。 誰が観ても判るストーリー、ドキドキハラハラする展開、物語を進めていく中で散りばめられた謎、話のどんでん返し、ハッピーエンド、これらは、本来的に観客が望んでいるものであるし、それこそが作品を面白くする要素なのだ。 あるいは、ベタかもしれない、しかし、それだけの要素を使いながら、きちんとオリジナリティ確保している。アップルシードを傑出した名作という人はいないであろう、しかし、これを観てつまらないと言う人は少ないだろう。 アップルシードを観る時、原作が共に士郎正宗であり、ほぼ同時期に公開されたこともあり『イノセンス』を意識しないわけにいかない。しかし、原作が同じであること以外に両作品の物語、演出上の共通点はあまり見出すことが出来ない。それは、観客に向かって作られたエンターテイメントと、作り手が自らの内側に向かって行ったイノセンスとのそもそもの基盤の違いである。 共通点は、物語の本質でなく作画法にあった。それは、高度の3Dアニメーションの多様である。しかし、3Dのテクニックの素晴らしさに驚嘆する一方で、2Dと結びつかせた時の妙な違和感こそが共通なのだ。つまり、コンピュターから派生したCGやモーションキャプチャーの映像とセルアニメの延長から生まれている人物画とが妙に画面でずれている。 特に、アップルシードでは、人物自体も3Gが多用されているのだが、明らかにモーションキャプチャーから作られた映像とアップになった時の顔とでは異質なものがぶつかり合い違和感を与えている。ちょうど、写真に手書きのイラスト貼りつけたような印象とでも言うのだろうか。技術の革新が進めば、この問題は解決されるのだろうが、おそらく、それはより実写に近づきセルアニメの表現方法から遠ざかっていくことに違いない。 今年の劇場アニメは、『イノセンス』や『ハウルの動く城』、『スチームボーイ』など大作が目白押しだ。アニメじゃないがアニメから実写化された『キャシャーン』、『キューティーハニー』、『デビルマン』などの話題作も多い。 アップルシードは、その狭間に落ち込んであまり話題になることが少なかったように思う。しかし、その期待感の薄さの中で見事に咲き誇ったB級大傑作アニメだ。 イノセンスのような哲学も、ハウルの持つ文学性も、スチームボーイが持つ安心し観られるエンターテイメントでもない。しかし、その中で確かな存在感を放っている。アップルシードの中にこそ、現代日本アニメの面白さの本質が存在する。/アップルシード公式サイト/株式会社デジタルフロンティア /イノセンス公式サイト /ハウルの動く城公式サイト /casshern公式サイト /キューティーハニー公式サイト /デビルマン公式サイト
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